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物語
覗けば聞こえる鈴の音
水野はるか 泣きった人は晴れ晴れとした表情をする。あらゆる感情を頭や体の中から絞り出すと、心に残るのは秋晴れに似た諦観なのだろう。「最後のお別れ」を済ませていく親族を見ながら絢子は思った。 晴れ晴れとした表情が並ぶ中、忙しない顔が一つ... -
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のぞきあな なぞなぞ
藤井真由美 1,光に満ちた中をのぞくととりどりの 色のかけらがころころと 踊っているよ 答え 万華鏡 2,小さな穴から光がこぼれて宇宙をつくりだす 答え プラネタリウム 3,コンコンコンだあれ?覗いてみると オオカミさんうちに子ヤギはいませんよどうぞお... -
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のぞき穴
壽山佑治 「あゝ、本当ならもう夏休みなのに。」と、ため息をついてしまう。夏休みは、いつもの学校ではできないことをできるチャンスなのに…。新型コロナウイルス感染症による、春休み期間の延長で授業日数が足りないとかで、なんと、たったの13日間の夏... -
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のぞいてるつもりが
とこだ あきを のぞいているつもりが のぞかれているのは よくあるはなし。 せまいとかんじているつもりが ひろいのは よくあるできごと。 ちかいとおもっているつもりが とおいのは よくあるおもい。 めをこらして みみをすまして くんくん くん... -
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虹
M. 紫青緑黄色オレンジ赤 最初に虹を見つけた人は 紫青緑黄色オレンジ赤 と数えた -
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遠い記憶
kato kako 小学生の頃まで家にはガスも電気釜もなく、土間にどっしり座したオクドさんと七輪でご飯炊きをしていた。台所の壁は煤(すす)で真っ黒で手押しポンプで井戸の水を汲み上げる、全てがアナログな暮らしだった。ぷかぷかと踏板が浮いた五右衛門風... -
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天井の穴
すやまよしこ ゆきちゃんは夏休みに入ってすぐ一人でおばあちゃんのおうちに泊まりに来た。おばあちゃんのおうちに行くときはいつもお父さんとお母さんが一緒だったが、今年は二人とも仕事が忙しいというので、ゆきちゃんはお父さんとお母さんを安心させた... -
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ちょうだいおじさん
ベノム三浦なおこ 1. ちょうだいおじさんの存在を知ったのは、梅雨時の津屋崎に引っ越してきて1週間もたたない頃だった。近所の人たちの溜まり場である王丸屋でそれぞれが持ってきたおかずをつつきながら一杯やっていた時のことだった。中村さんがそろ... -
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誰かの日記、のぞいた先に見えるもの
金氣穂乃香 これは、とある誰かの日記から、ある出来事について文字起こししたものである。日記を書いた人の名前や、年齢、住んでいる場所、そして今生きているのかどうかは分からない。 ○月○日今日は朝3時に目が覚めた。外はまだ真っ暗で、しんとしていた... -
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絶海
東風堂 ざざ、ざざ、と波の音がする。ざざ、ざざ、ざざ、ざざ、と。 おそらく永遠に繰り返されるであろう海のささやきは、男に何の感情も呼び起こさなかった。 慣れきってしまって何も聞こえていないのと同じになってしまっていた。 ぎらつく日の光の下、...