声の影

古橋 範朗

古びた木戸の隙間に

忘れ去られていた

無数の声を見た

永い時を経ても

消えることのない

遥か古からの祈り

幾重にも重なり合った

声無き声のその先に

わたしと云ふものが

幻のように浮かび上がる

いつの日にか

鉛の躰は消え去り

光に満ちた彼方へと還りゆく

苔生す森を後にして

遥か遠い先の未来へと