希望

黒瀬ゆう子

窓辺の花が、しくしくと泣いている。
「もう一度見たいわ、窓の外の世界。窓を開けて。」
と叫びながら。
人には聞こえない声で。
「死ぬ前に見たいわ、外の世界をもう一度。
もうすぐに枯れてしまうから。

メイドさんがやって来て、花からは見えないところの窓を開けた。

「この窓を開けてちょうだい!
この窓を開けてちょうだい!」
と、叫ぶ花。
人には聞こえない声で。

花は、どんどんしぼんでいく。
「窓の外を見たいの、開けて!」
花は叫ぶ。

そして、もうすぐ枯れる、というそのとき、
メイドさんが窓を開けてくれた。

小さなすき間から、鳥の声が聞こえる。
空はどこまでも青く、涼しい風がいいにおいを運んでくる。

「外を見れて、よかった…。」
花は、小さなすき間から外を見ながら、
静かに枯れていった。